Category Archives: 経済協力

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (2)

ASEANのリーダーたちによるAECの創造(現状はどうであれ)は素晴らしいものです。ASEANのリーダーたちによれば、AEC成功は(ASEAN各国の更なる成長を期待できることから)実現すると言っています。ASEANの政策に携わっている人々の間ではこの点においては満足されています。(貿易や国間のつながりにおいては機会を十分に生かし切れてはいませんが)
ASEANの多くの国では、2ヵ国間による自由貿易協定、ASEANの更なる投資及び規制への取り組みにより経済は発展すると考えられています。
これらは中々経済統合の実現に至らない事が要因かもしれません。しかしこの事によりASEANの経済統合には活気がないのかもしれません。
ASEAN外の貿易相手国は、ASEANを共同市場とみなしていないため、アメリカ等の国はTPP(環太平洋地域経済連携協定)を出して来たり、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に対する議論の余地を与えられないのです。
代わりに、政策担当者はASEANの設立当初の目的やASEAN内の関係安定を図る事をもう一度思い出す必要があります。
彼らは、AECは中国やインドなどの大国と対立した際、ASEANを統合させ、文化の違いなどを考慮した上での平和と相互理解を促す為のものだと認めなければなりません。
ASEAN各国がこの事を念頭に置いていれば現在AECは発展していたかもしれません。これを踏まえ、これから政策担当者はAECを実現させるために実際に行動しなければなりません。

<参考サイト紹介>
ASEAN域内の特恵関税を受けるための手続きおよび規則:JETRO

誰もAECが一晩にして達成するとは思っていません。
しかしASEAN会議において理念の供述、一般的なガイドラインだけで終わってしまっていると誰もAECが実現するとは思いません。
もしもAECが経済統合を促し、RCEPの先駆けになるのであれば、政策担当者は統合を進める必要があります。
政治家個人が説得力のあるもっともらしい事を言う事は可能です。しかし一度明確な目標が設定されるとグループとしてのASEANは有言実行しなければなりません。
ASEAN内のリーダーたちはASEANの経済統合(貿易及び投資)の進み具合を図る明確な測定方法を設定しなければなりません。貿易促進、無関税化及び非関税障壁の排除を促す確実な一歩を踏み出す必要があります。
これからASEAN各国がすべきことはASEAN内においての自由な投資を認める事です。
国内一位になっても、ASEANメンバー内で新たなライバルと競い合う事、中小企業は更なる事業拡大を目指す事、インフラもASEAN各国での後方支援により改善させていく事、等が挙げられます。
これらの達成は簡単なことではありませんが、ASEANがさらに上を目指し、そのために行動すれは経済統合につながるでしょう。
目標が逸れそうになったら、もう一度初心に返り、これは当初の目的達成に必要な事なのか、を考えるのです。広すぎる範囲での協定を設定するよりも、範囲を狭め明確な規定を設定するのです。
ASEAN会議を開くとなると様々な分野で様々な働きが行われます。(計画、資金、警備、及び交通機関。)リーダーたちも貴重な時間を割いて会議へと参加します。
これらを踏まえた上で、ASEANメンバー国ではこの会議によるASEANの更なる発展を期待して当然です。ASEAN各国が経済統合において真剣なのであれば、その根本を掘り下げていく必要があるのです。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (1)

ASEANがASEAN内貿易について掘り下げていかなかった為、その機会はすでに失われてしまったのでしょうか
NUSビジネススクールのアンドリュー・デリオスによる議論
シンガポール:ASEANは多方面において成功を収めています。発足以来約50年間、当初のメンバー国の約倍の国が参加しています。
長期にわたり、国間での抗争もなく平和に繁栄してきています。
1993年からASEAN内貿易は4,000億ドルから2.5兆ドルと、6倍以上も上がりました。ASEAN各国では貧困が減少しました。ASEANの6億人の人々が低収入や貧困層でしたが、今やゆっくりと、しかし確実に貧困から低収入、低収入から中流階級へと変化してきています。
シンガポールは世界的に見ても裕福な国であり、ベトナムなどの国は急激な経済成長の最中にあります。
一方インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア等の国々は中流階級です。
ASEANのリーダーたちにより、ASEANの2020年の目標(平和で繁栄する地域)が設定されました。
この目標において重要な点は更なる経済成長の促進と、ASEAN内の貿易の活発化並びに国間の自由な人々、商品、サービス及び資本の移動です。
しかし現時点ではこれらの目標は達成されていません。

ASEAN内貿易はあまり活用されていません。ラオスを除くASEAN各国での貿易はASEAN内よりもASEAN外のほうが活発で、これには3つの要因があります。
比較対象としてNAFTA(北米自由貿易協定)を挙げます。NAFTA内貿易はNAFTA外貿易を発足から5年で上回らせることに成功しました。
ASEAN内で1番の開放経済のシンガポールでさえASEAN内貿易は全体の約4分の1です。ベトナムは国際経済の中に居ます。ASEAN内貿易は、ASEANで行われている貿易の僅か13%に留まっています。
ASEANの目的の一つにはASEAN内貿易の活発化が挙げられていますが、達成には程遠いいのです。
ASEANにとって、ASEAN内貿易よりもASEAN外貿易の方が魅力的です。これはASEAN内での経済の深い結びつきは確立されていない事になります。
経済の結びつきは経済発展への競争心を煽ります。
ASEAN内貿易が活発に行われていないという事は、ASEAN各国はASEANよりも経済大国であるアメリカや中国に頼っている事になります。
しかし関税の削減や非関税化導入により、ASEAN内貿易を活性化させる余地はあるのです。
世間一般で知られている様に、ASEAN内では様々なレベルでの経済発展の最中です。
低収入の国と高収入の国間での貿易は、お互いに有利な点があります。国と会社は常に対立関係にありますが、経済成長をするためには競争が必要なので、これはむしろ良い事なのです。
現在までASEAN内貿易を活発化させてこなかった為、その機会は失われてしまったのでしょうか。
中国の成長によりASEANの経済への挑戦は一時ストップされました。1990年代に中国の急激な世界的経済への参入が始まりました。急激に世界経済の中心に入り込み、貿易大国へと成長しました。
投資界ではASEANは一つの経済とみなされていたにもかかわらずASEAN内で実現出来なかった、広大な生産ネットワークを確立したのです。
中国の経済成長は賃金上昇につながり生産コストもあがりました。それにより、移民労働者が必要になってきたのです。
また、中国の生産ネットワークが東部のみではなく他の地域にも移動をしてきました。
しかし、これは更に中国内陸部、インド及びASEANにまで広がりを見せるのでしょうか。
開放的、競争的、そして包括的であるASEANにも新しい産業を引き付ける魅力はあるのでしょうか。
AEC(ASEAN経済共同体)達成のためには段階を踏む必要があります。
なかなか踏み出せずにいた第一歩を踏み出し、地域により異なる経済を単一市場へと変化させるのです。単一市場になる事で、能力及び機会を平等になります。ASEANが単一市場になることで他の経済大国と並び交渉する事も可能になります。
現段階においては、あまり大きな動きは見られません。話題は不確実で不透明な統合と協力について持ち切りです。報道によれば、セキュリティー面においての問題に集中しているようです。(北朝鮮問題、中国の東シナ海問題、国家独立政策など)
しかしこれらの事について話し合っていても、ASEAN経済の発展にはつながりません。
ASEANのリーダーたちは経済統合についての話し合いの場を幾度も設けられていますが、なかなか経済統合に向けての動きは見られません。
この事に進展があれば、投資家や会社のASEANへの関心も高まるでしょう。(今のところその兆しはあまりありません。)
ASEAN各国には何が出来るのでしょうか。
1つや2つの議題が成功へとつながっていれば動きも活発になるのではないでしょうかと、言っている人々もいます。

アジアの経済協力はどのように変わっていっているのでしょうか。

現在、アジアは経済において根本からの変革が行われている最中です。
中国では輸出主導型から消費主導型へと成長しました。
インドでは逆の事が起こっており、インド製商品の製造、輸出が経済成長へつながると考えられています。
2015年に設立されたAEC(東南アジア諸国連合経済共同体)は、更なる物品、サービス及び労働において東南アジア内での更なる動きを目標にしています。
日本はこの構造改革を各国の競争心を高める事になると受け入れています。
この動きはASEAN(東南アジア諸国連合)地域の経済協力及び統合を促進しています。
更にこれは6つのパラダイムシフトを推進します(それぞれ地域経済の予想に深く関係している)。

中国などが中(上)流階級の国になってきた事により、アジア諸国はアメリカ合衆国、EU(欧州連合)のような世界的輸入国になってきました。
アジア及び太平洋による地域間貿易は2010年〜2014年は55.8%だったのですが、2015年には57.1%に上がりました。
GMS(大メコン圏)においては同期間で2倍の8%(4000億ドル)にまで上がりました。
地域間の貿易はそれほど盛んではありませんでしたが、アジアの需要と供給のチェーンとなる事を予想せれ、最近ではそれが専門化されてきています。
AECは恐らくアジアを大きな単一市場にしようという計画の第一歩だと言えるでしょう。

地域間投資の成長は今後も期待できます。
地域内でのFDI(海外直接投資)は2015年には全体の52.6%のまで増加しました。GMS加盟国、カンボジア、ラオス及びミャンマーではFDIの大半は中国、タイ及びベトナムから来ています。
中国の会社は地域的な合併や買収を盛んに行っており、2015年には投資額は合計で500億ドルにまでなりました(アジア全体の約40%)。

地域的なサプライチェーン及びバリューチェーンは再形成されています。
中国及び日本のような高賃金国の会社の多くは、ASEANへの移動を考慮し始めています。
中国企業は更に中央アジア及び東南アジアへ進出し始めています。
この流れが続くと、地域的なサプライ及びバリューチェーンが確立されていき、アジアで独立した統合経済の確立につながります。
アジアの国々は協力し、包括的で環境に配慮し、経済的にも安定した地域を作っていく必要があります。

人々が国境を行き来する事もまたアジアの経済の独立につながります。
2010年のアジア内の移民者は全体の38%で、2015年には36.7%に下がってしまいましたが、人数的には3,060万人と良い数字を出しています。
アジアへの旅行者も増加しており、海外からのGMSへの旅行者は2015年には6,000万人にまで達し、2008年の2,600万人と比べるとかなりの成長が見受けられます。
これらの事から、アジア各国政府が国境間の移動をさらに促進させる努力をしなければならないとプレッシャーを感じています。

アジアの政府は、品物、サービス及び労働力の移動が更に簡素化するような地域及び国間での交通網を発達させなければなりません。
この事に関しては、交通機関の建設がGMS内では活発になってきています。
地域間の交通機関の連結は、徐々にではありますが進められてきています。更に発展させるためには、更なる政策や政府の協力が必要です。
更に、アジア地域での新たな輸送機関、ロジスティクス(輸送機関を独立させる地域の枠組み等を含む)の開設が必要です。
GMSにおいての貿易の円滑化に関する協定は確実な第一歩です。しかしこれではまだ足りません。

過去10年アジアは資本不足の解消に成功し、現在は豊富な資本を獲得しています。
アジア経済においての外貨両替も、1990年代の7000億ドルから、2014年には4兆ドルにまで上昇しました。
資本の流れはアジア内のみではなく、他地域からも増えています。
これは、資金面においての地域及び国の発達に大きく関わっています。
アジア諸国の発展において海外からの経済援助も不可欠ですが、彼らは経済をさらに発展させ、ライバルになっていかなければなりません(海外からの援助なしではやっていけない時代は終わったのです)。
経済改革によりアジア地域や国間においての協力及び統合が活発化し、これらは独立した経済の確立へつながります(これにより物品、サービス、労働力及び投資の国間の移動も活発化する)。
AECによるアジア単一市場及び生産拠点という目標は、近い将来実現する可能性を秘めています。
包括的で、環境に配慮し安定した経済を築いていくには政府が一丸となり協力する事が不可欠です。

ADBの大メコン圏においての責任者です。ADBに加わる前にはWTO(世界貿易機関)組織のベトナム外務省でありベトナムのWTOへの参加に貢献しました。同様にベトナムとアメリカ合衆国の二国間貿易協定にも携わっていました。
インドネシア、ジャカルタのASEAN事務局においてプログラム調整組織を率いていました。