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ASEAN(東南アジア諸国連合)においての労働力の移動

2015年末のAEC(ASEAN経済共同体)の設立により、成長過程にある地域においての政治、経済及び異文化の統合の重要な画期的変化を達成しました。
ASEANブループリントが2007年に出来て以来、ASEANでは「ASEAN内での物品、サービス、投資及び熟練労働者の自由な移動、そして自由な資本の流れにおいての改革」を目指してきました。
地域内でこれらの項目における自由化及び統一化がかなりの成長を見せている中、熟練労働者の自由な移動においては遅れを取っています。
ASEANの目標では、自由な労働者の移動としていますが、現在の規約はすでに自由な労働者の行き来が行われているEU(欧州連合)の後を追っているだけでなくASEAN内での協定はNAFTA(北米自由貿易協定)、CARICOM(カリブ共同体)に比べ、やる気のない地域間協定が多いのです。
地域間協力が欠如する中、国家主義者、保護貿易主義及び政治的事柄も自由な労働力の動きを妨げている事に関係しています。
しかし、雇用主は特定の分野においての熟練労働者の採用を促す協定を有利に使う事も可能です。
主にMRA(相互承認協定)により熟練労働者の自由な動きは認められ、(MRAは各国で認められている能力、技術、経験及び認定書がASEAN内で有効になる)母国以外での労働を可能にします。

MRAは現在以下の職業において認められています。
・エンジニアリング
・看護
・建築
・薬学
・歯科医
・旅行業
・測量(枠組み)
・会計(枠組み)

MRAにより定められている基準はそれぞれの職業によって異なります。
例えば、エンジニアはまず母国の規制機関が発行している免許を取得する必要があり、更に卒業後最低7年間の労働経験が必要です。
これらを終え、ようやくACPECC(ASEAN公認プロエンジニア統合委員会)に応募できます。そしてもし採用されればASEAN公認のエンジニアとしてASEAN内の他の国で労働する事が可能になります。
一方、旅行業では個々の評価は全般廃止され、旅行に関する32の職業が自動的にMRA対象になりました。
MRAの他にも、MNP(自然人の移動) ASEAN協定、ACIA(ASEAN包括的投資協定)によりビジネスビザ取得の手続きは簡素化されました。
物品及びサービスの貿易、投資家、ビジネス訪問、契約サービス供給者、会社内訪問者などの国間の行き来や滞在も以前と比べ簡単に出来るようになりました。

MRAにより規制されている8つの職業においての自由な労働力の行き来は、以前よりは増えているものの、それ程活発ではありません。
例を挙げると、NAFTA(連合国というよりは地域的な貿易協定)では63の分野の職業において、カナダ、アメリカ合衆国及びメキシコ間の自由な行き来をするのに必要なものは雇用契約のみです。
MRAにより移民してきた労働者の割合はその地域の労働者のたった1.5%の割合で、ASEAN内の87%の労働者は何の技術も持っていません。(そのうちの多くの人は正式な協定に基づき移民してきた人ではありません)
MNPとACIAが国境をまたぐビジネスを促進している中、ビザについては地域ごとに規定が異なり、雇用主がASEAN各国から技術者を雇う機会を増やしていません。
MRAが適用される職業が少ない事、さらに実際にMRAの制度を使う事もまた難しいのです。
カンボジア、タイ、ミャンマー及びラオスでは、移民労働者の行き来が行われる際に会社は将来的には移民労働者が地元労働者に変わり活躍していくことを示さなければなりません。
インドネシアでは、移民労働者を雇う際、地元の労働者だけでは対応しきれないということを証明しなければなりません。
フィリピンでは更に、特定の職業において移民労働者を禁止しています。
しかし国際的な会社ではこれらの規制を避けることが可能です。(1つの国で労働者を雇い、彼らを海外支社へ移動させる。)
東南アジアの多くの国での労働規制は、労働力の自由な移動についての政治的及び地域的な意欲の欠如を表しています。
政治家、企業団体及び地域が移民労働者がより発展している国に流れ込んでしまい、競争が生まれる一方、発展途上国では高等教育を受けた貴重な国民が全て外国へ流れ出てしまう事を恐れている事が原因の一つです。
これらのことが懸念される中、フィリピン、インドネシア及びベトナム(これらの国はASEAN内の他国からの高等教育を受けた移民労働者を有利に活用できる)では、労働力と技術が不足しています。
同様に、タイ、マレーシア及びシンガポールでも労働力不足に困っています。(この点においてはインドネシアは若い世代の労働可能者が多く、自国で賄えている)

労働力の効果的な自由な移動を目標にするに当たり、様々な産業において規制が必要になります。また規制だけではなく、良識ある機関などが、そういったところに入り監理が行えると良いでしょう。

東南アジアに進出して10年を超える企業や海外現地工場で生産を行っている企業、海外現地にてサービス業を行っている企業などで構成されています。
組合案内 (リンク:日越振興協同組合

ASEANの航空業界を例に挙げると、資格、訓練、安全面、メンテナンス、航空交通規制及びオペレーションにおいての共通する規制はありません。
ASEAN内の工業において共通のガイドラインを作る事は地域産業の成長を促し、巨大な労働力を生み、地域協力を促すことにつながります。
ASEAN資格参照枠組みの設定によりいくつかの面においては国際的な認定を作り、規制の共通に働きかけ、更に大学などでも共通した基準を設ける事を促しています。
長い目で見ると、ASEAN内での労働力の移動は実現すると思われます。しかし、自由な労働力の移動においては、遠い道のりになりそうです。
この点はAEC(ASEAN経済共同体)において唯一明確な目標達成に向けての計画がありません。
自由な労働力の動きをASEANが目標にしてきていることを踏まえ現状を見てみると驚きが隠せません(国間の労働者の移動があまりにも少なすぎる為)。
実際、ASEAN内の企業がASEAN外からの労働者を雇うよりもASEAN内の労働者を雇う方が利点がある、という訳ではありません。
多くは、ASEAN内又はASEAN外の国から労働者を雇う場合、どちらもビザ及び雇用許可取得の手続きはどちらもさほど変わらないのです。
MRAが適用されている職種においても、雇用主はASEANにこだわらず、更に広い選択肢から労働者を選びます。
ASEANで事業を行う際、事業主はASEAN各国の発展の差と複雑な規制及び将来的な労働者不足の可能性も考慮する必要があります。

東南アジアで働く人にとって大事なもの

私のように東南アジアの国を行き来しながら働いていると、iPhoneというのは結構不便なものです。
なぜならiPhoneはSIMカードが1枚しか入らないからです。(海外で売られているスマートフォンは2つのSIMカードが入るデュアルスマホが主流です)しかし、最近、あることを知ったおかげでiPhoneを買おうと検討しています。
それは、インターナショナル ローミング シムです。
何かと言うと1枚のシムカードで世界中の国や地域で使うことが出来る大変便利なカードです。
カードによっては通話のみ、データ通信のみと分かれていたり、プリペイドやポストペイドと言ったようにも分かれてたりと、使う人の用途に合わせてそれぞれ対応されている非常に便利なものです。
通信費は500MB20$や30$といったように、正直安くはないのですが、1枚のシムカードで世界各国で使えるというのは、国と国を移動する人間からすると非常に便利です。ましてや日本出張時にも使えますから。
ちなみに日本での利用も出来ますから、出張期間が短い場合は大変重宝するかと思います。

ただ調べているとタイとベトナム、マレーシア、シンガポールとアセアン地域を網羅しているのかと思うと、肝心のカンボジアが抜けており、少し残念に思っている今日この頃です。

女性労働者に更なる権利を与えなければならない

10ヵ国により構成されているASEANはエネルギーに満ちあふれた経済組織です。
ASEANは現在世界第7位の経済力と世界第3位の労働力(これは将来的に更なる成長をする可能性を持っている)を誇っています。
ASEANの可能性を最大限に引き出すためには、様々な分野での労働力及び国間での自由な労働力の行き来が行われる必要があります。
現在、ASEANでは労働者の移民が活発に行われています。
ASEANに移民してくる人口は990万人にもなり、そのうち690万人がASEAN各国からの移民です。
ASEAN内での移民者の約半数は女性です。さらに統計結果によれば、この割合は増え続けています。
しかし、これはあくまでも記録されている移民労働者のみに基づいているもので、未申請の移民労働者は含まれていません。
さらにこの移民労働者たちは現状に満足しているのか、また、平等な権利は与えられているのか等は分かっていません。
ASEAN事務局、フリードリッヒ・エーベルト財団及びインドネシア労働省と協力し、UN Woman todayは「AEC(ASEAN経済共同体)においての女性移民労働者」という調査記事を出版しました。
この中では、「ASEANへ移民してきた人々に平等な機会が与えられていれば、移民者の利益やチャンスは更に大きかったのか」について書かれています。(この調査は、DFAT(オーストラリア外務貿易省)による資金提供により実現しました。)
この調査により分かったことは、ASEAN内の女性労働者はこれらのグループに集中している事です:低賃金労働者、技術を持たない労働者、軽視されている分野においての労働者等(これらの職業は不安定な環境で、労働者への権利があまり与えられておらず、社会保証などの制度も適応しない場合が多い) 。
この調査では、ASEANの女性労働者は様々な職業に平等に参入し、ASEAN経済統合による利益を平等に受ける権利があるのではないかについての議論がなされており、女性労働者でも安心して働ける場所を提供する人材紹介会社や支援する団体も増えています。

<参考サイト>
ASEANで女性でも安心して仕事が探せる求人サイト:キャリアリンクアジア

経済成長の最中である地域の非公式経済に参入することは、女性に対しての社会保障制度の強化、採用するまでの手続きの簡素化及び低コスト化、職業訓練の強化並びに法律扶助が必要です。
この調査では、適切な労働力の移動手段を制定することにより、より良い職業を手に入れる平等な権利が出来るのではないか、という結論にたどり着きました。
ASEAN内で、男女平等に対しての動きが勢いづいてきており、社会的に見て、法の下で女性が利益(教育面、健康面等)を得る事が可能になってきました。
しかし、女性がもっと効果的に経済に参加するには更なる努力が必要なのも確かです。
私たちの調査によれば、女性移民労働者は、移民先国と出身国のどちらの経済にも貢献していることが分かりました。
女性移民労働者は男性移民労働者に比べ給料の更に大部分を自国に残してきた家族に送り、彼女らの子供、出身地域及び出身国に貢献しています。
更に彼女らは、働いている国において賃金上昇を促し、すべての労働者の生活基準の向上を図っています。
女性の権利及び平等について働きかける事により、ASEANは全体的な成長を遂げる事が可能と言えるでしょう。
これが今すべきことであり、賢い事でもあります。
女性に平等な権利を与え、女性にどれだけの能力があるのかを認識するのです。
ASEANは彼らの目標である誰も取り残されることのない、人間優先及び人間中心のASEANに向け更なる活動をしていかなければなりません。
彼らがとるべき行動は以下が挙げられます。

経済援助、女性起業者への支援(女性起業者はすでに各国で活躍しています)、女性への教育の強化(化学、テクノロジー、エンジニア、数学等)
男尊女卑の古い考えを排除し、第4次経済発展において女性が男性と並びより良い職業を求め競争する事を可能にしなければなりません
(そのためには女性の採用を増やし、彼女らにふさわしい職業を与える事等が上げられます)。
まずは、(UN Woman)WEPs(女性のエンパワーメント原則)にサインし女性の参入に重点を置き、文化の変革を受け入れるのです(家庭内での男女の役割の見直し等)。
多くの男性は、子供、病人及び年配者に対して女性と同等の責任を負うことについて問題ないとしています
(しかしASEAN内での現状は、女性の方が圧倒的に家事及び育児をしており、この事により経済参入に後れを取っています)。
これらの提案は、国連事務総長により定められた女性の経済参入についてのハイレベルパネルに反響されたものです。
このパネルは従来の経済に対する常識を変える事により、男女平等に家事及び育児をし、女性が平等に経済参入する事を可能にします。
企業には、女性採用が目標数に達するとインセンティブを受け取れるという利点もあります。
私たち全員(規則発案者、会社及び個人)が女性に対しての平等な機会、権利そして平等な労働環境を手に入れられる社会(これによりASEANの更なる発展も促せる)を作る責任があります。
これは女性にだけ利点があるのではありません。女性に権利が与えられることにより、経済全体、社会及び国全体の利益につながります。
更にこれはASEAN内及び国際貿易を活性化させ、将来的には全てにおいての目標、人間中心を達成できるのです。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (2)

ASEANのリーダーたちによるAECの創造(現状はどうであれ)は素晴らしいものです。ASEANのリーダーたちによれば、AEC成功は(ASEAN各国の更なる成長を期待できることから)実現すると言っています。ASEANの政策に携わっている人々の間ではこの点においては満足されています。(貿易や国間のつながりにおいては機会を十分に生かし切れてはいませんが)
ASEANの多くの国では、2ヵ国間による自由貿易協定、ASEANの更なる投資及び規制への取り組みにより経済は発展すると考えられています。
これらは中々経済統合の実現に至らない事が要因かもしれません。しかしこの事によりASEANの経済統合には活気がないのかもしれません。
ASEAN外の貿易相手国は、ASEANを共同市場とみなしていないため、アメリカ等の国はTPP(環太平洋地域経済連携協定)を出して来たり、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に対する議論の余地を与えられないのです。
代わりに、政策担当者はASEANの設立当初の目的やASEAN内の関係安定を図る事をもう一度思い出す必要があります。
彼らは、AECは中国やインドなどの大国と対立した際、ASEANを統合させ、文化の違いなどを考慮した上での平和と相互理解を促す為のものだと認めなければなりません。
ASEAN各国がこの事を念頭に置いていれば現在AECは発展していたかもしれません。これを踏まえ、これから政策担当者はAECを実現させるために実際に行動しなければなりません。

<参考サイト紹介>
ASEAN域内の特恵関税を受けるための手続きおよび規則:JETRO

誰もAECが一晩にして達成するとは思っていません。
しかしASEAN会議において理念の供述、一般的なガイドラインだけで終わってしまっていると誰もAECが実現するとは思いません。
もしもAECが経済統合を促し、RCEPの先駆けになるのであれば、政策担当者は統合を進める必要があります。
政治家個人が説得力のあるもっともらしい事を言う事は可能です。しかし一度明確な目標が設定されるとグループとしてのASEANは有言実行しなければなりません。
ASEAN内のリーダーたちはASEANの経済統合(貿易及び投資)の進み具合を図る明確な測定方法を設定しなければなりません。貿易促進、無関税化及び非関税障壁の排除を促す確実な一歩を踏み出す必要があります。
これからASEAN各国がすべきことはASEAN内においての自由な投資を認める事です。
国内一位になっても、ASEANメンバー内で新たなライバルと競い合う事、中小企業は更なる事業拡大を目指す事、インフラもASEAN各国での後方支援により改善させていく事、等が挙げられます。
これらの達成は簡単なことではありませんが、ASEANがさらに上を目指し、そのために行動すれは経済統合につながるでしょう。
目標が逸れそうになったら、もう一度初心に返り、これは当初の目的達成に必要な事なのか、を考えるのです。広すぎる範囲での協定を設定するよりも、範囲を狭め明確な規定を設定するのです。
ASEAN会議を開くとなると様々な分野で様々な働きが行われます。(計画、資金、警備、及び交通機関。)リーダーたちも貴重な時間を割いて会議へと参加します。
これらを踏まえた上で、ASEANメンバー国ではこの会議によるASEANの更なる発展を期待して当然です。ASEAN各国が経済統合において真剣なのであれば、その根本を掘り下げていく必要があるのです。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (1)

ASEANがASEAN内貿易について掘り下げていかなかった為、その機会はすでに失われてしまったのでしょうか
NUSビジネススクールのアンドリュー・デリオスによる議論
シンガポール:ASEANは多方面において成功を収めています。発足以来約50年間、当初のメンバー国の約倍の国が参加しています。
長期にわたり、国間での抗争もなく平和に繁栄してきています。
1993年からASEAN内貿易は4,000億ドルから2.5兆ドルと、6倍以上も上がりました。ASEAN各国では貧困が減少しました。ASEANの6億人の人々が低収入や貧困層でしたが、今やゆっくりと、しかし確実に貧困から低収入、低収入から中流階級へと変化してきています。
シンガポールは世界的に見ても裕福な国であり、ベトナムなどの国は急激な経済成長の最中にあります。
一方インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア等の国々は中流階級です。
ASEANのリーダーたちにより、ASEANの2020年の目標(平和で繁栄する地域)が設定されました。
この目標において重要な点は更なる経済成長の促進と、ASEAN内の貿易の活発化並びに国間の自由な人々、商品、サービス及び資本の移動です。
しかし現時点ではこれらの目標は達成されていません。

ASEAN内貿易はあまり活用されていません。ラオスを除くASEAN各国での貿易はASEAN内よりもASEAN外のほうが活発で、これには3つの要因があります。
比較対象としてNAFTA(北米自由貿易協定)を挙げます。NAFTA内貿易はNAFTA外貿易を発足から5年で上回らせることに成功しました。
ASEAN内で1番の開放経済のシンガポールでさえASEAN内貿易は全体の約4分の1です。ベトナムは国際経済の中に居ます。ASEAN内貿易は、ASEANで行われている貿易の僅か13%に留まっています。
ASEANの目的の一つにはASEAN内貿易の活発化が挙げられていますが、達成には程遠いいのです。
ASEANにとって、ASEAN内貿易よりもASEAN外貿易の方が魅力的です。これはASEAN内での経済の深い結びつきは確立されていない事になります。
経済の結びつきは経済発展への競争心を煽ります。
ASEAN内貿易が活発に行われていないという事は、ASEAN各国はASEANよりも経済大国であるアメリカや中国に頼っている事になります。
しかし関税の削減や非関税化導入により、ASEAN内貿易を活性化させる余地はあるのです。
世間一般で知られている様に、ASEAN内では様々なレベルでの経済発展の最中です。
低収入の国と高収入の国間での貿易は、お互いに有利な点があります。国と会社は常に対立関係にありますが、経済成長をするためには競争が必要なので、これはむしろ良い事なのです。
現在までASEAN内貿易を活発化させてこなかった為、その機会は失われてしまったのでしょうか。
中国の成長によりASEANの経済への挑戦は一時ストップされました。1990年代に中国の急激な世界的経済への参入が始まりました。急激に世界経済の中心に入り込み、貿易大国へと成長しました。
投資界ではASEANは一つの経済とみなされていたにもかかわらずASEAN内で実現出来なかった、広大な生産ネットワークを確立したのです。
中国の経済成長は賃金上昇につながり生産コストもあがりました。それにより、移民労働者が必要になってきたのです。
また、中国の生産ネットワークが東部のみではなく他の地域にも移動をしてきました。
しかし、これは更に中国内陸部、インド及びASEANにまで広がりを見せるのでしょうか。
開放的、競争的、そして包括的であるASEANにも新しい産業を引き付ける魅力はあるのでしょうか。
AEC(ASEAN経済共同体)達成のためには段階を踏む必要があります。
なかなか踏み出せずにいた第一歩を踏み出し、地域により異なる経済を単一市場へと変化させるのです。単一市場になる事で、能力及び機会を平等になります。ASEANが単一市場になることで他の経済大国と並び交渉する事も可能になります。
現段階においては、あまり大きな動きは見られません。話題は不確実で不透明な統合と協力について持ち切りです。報道によれば、セキュリティー面においての問題に集中しているようです。(北朝鮮問題、中国の東シナ海問題、国家独立政策など)
しかしこれらの事について話し合っていても、ASEAN経済の発展にはつながりません。
ASEANのリーダーたちは経済統合についての話し合いの場を幾度も設けられていますが、なかなか経済統合に向けての動きは見られません。
この事に進展があれば、投資家や会社のASEANへの関心も高まるでしょう。(今のところその兆しはあまりありません。)
ASEAN各国には何が出来るのでしょうか。
1つや2つの議題が成功へとつながっていれば動きも活発になるのではないでしょうかと、言っている人々もいます。

ASEAN内での労働力の自由な移動が必要

ASEAN(東南アジア諸国連合)が本領発揮をする為には、ASEAN内でのさらなる労働力の自由な移動が必要です。
世界の国々が競合的であり続ける為には、国際的な才能を手に入れる必要があります。これには、熟練労働者の国間の移動が必要です。
国の人口や国々の経済格差などもその国が必要としている分野においての労働力の移動を促進しています。
技術者の移動はMRA(相互承認協定)を施行する事によって計画的に実行していくことが可能です。
MRAにより認められる項目は教育を受けた上での専門的な資格のみで無く、才能、技術及び知識も含みます。
MRAは一般的な職業またはその国が必要としている専門的な職業どちらにも適応します。
しかしASEAN内でのMRAは未だ不完全なものであり、完全に自由な労働力の行き来は行われていません。
ASEANのメンバー国が協力的になり、労働者が行き来するのにより良い環境を作り出さない限りこの現状は変わりません。

ASEAN内の有能な技術者達はASEAN外の国々に移動してしまう傾向にあります。
それにもかかわらず、ASEAN内での労働者(熟練労働者を含む)の移動は活発に行われており、これはASEANの技術者の漏えいを止め、ASEAN発展を促進し、AEC(ASEAN経済共同体)の潜在的な能力を発揮させることを可能にします。

ASEAN内での労働者の自由な移動を活発にさせるための3つの方法

ADB(アジア開発銀行)と移民政策機関の共同調査によれば、ASEAN内での労働者の移動を促進させるには3つの異なる方法があることがわかりました。
1.MRAの制度を全ての職業に適応させる。
2.MRAの幅を狭め、限られた職業にのみ適応させる。
3.包括契約を通じて、将来のMRAの為さらに詳細に設定する。

1の方法はEU(欧州連合)が行っているもので、EU内の国民は例え就職先が決まっていなくても、好きな国に自由に移民できます。
このEUのとっている方法はASEAN内、またはアジア全体で見ても、決定的な人口動態の違い及び経済格差があるため、非現実的です。
ASEAN内のいくつかの国、例えばフィリピンでは若者の人口は増えていますが、シンガポールなどの国では高齢化が進んでいます。これは労働者の自由な移動を阻んでいます。
従って、ASEAN及びアジア全体で見ても、2のMRAの幅を狭め、限られた職業にのみ適応させる方法があっていると言えます。
しかし、2のMRAの幅を狭め限られた職業にのみ適応させる方法、または3の包括契約を通じて、将来のMRAの為さらに詳細に設定する方法を取れば、移民労働者受け入れ国は自国の教育制度やシステムに沿って一方的に新たな基準を補足することが出来ます。
例えばある国では、移民の看護師を採用する場合、自国民に求める経験年数とは異なる経験年数を求める事などが挙げられます。

AECが単一市場及び単一生産拠点になる(最も重点を置いている目的の一つ)為には、メンバー国が技術の流動性を促進しなければなりません。
現在、観光その他6つの分野において規制されています。(会計業務、建築業, 歯科医療, エンジニア, 薬事業及び看護医療)
しかし実行されてはいるものの、詳細な部分が透明性に欠けている為、不平等な部分もあり時間がかかっています。
MRAを掘り下げていくにはさらに幅広い職種及び技術を適応させる必要があります。
建築業及びエンジニアではASEAN内で認められる資格証明書を作り、会計業務の分野でも追って共通の資格証明書の発行についての話が進められています。
従ってこれらの職種に就いている移民者はASEAN内で、保持している資格が認められるのですが、だからと言って自由にASEAN各国を移動し、自由に働くことが出来るというわけでもありません。

重要な教訓
さらなる発展のためには、ASEAN各国にMRAを導入するにあたり3つの重要な教訓があります。

1.国々での異なる訓練の仕方を基準化することは難しいことです。しかし資格の相互認証はこれからも引き続き課題になって行きますが、これは教育制度を基準化したからといって簡単に達成できるものでもありません。ASEAN内で資格制度が異なるということを認識し、それに対応する補足的な基準を設ける等の対処が必要です。
自国又は移民先の国による指導教育を受け職場での経験を積む等が挙げられます。

2.ASEANは各国の需要により集中してMRAを導入するのか、分散してMRAを導入するのか戦略的に選択する必要があります。
集中型の場合さらなる方策が必要であり、分散型の場合は、管理することが困難になります。
例えばEUのように集中型を取るとなるとシステムを作ることにも維持することにも莫大な予算がかかります。
ニュージーランドとオーストラリアはお互いMRAがあり、それはEUよりも低予算で実現していますが、コンプライアンス面での課題が残されています。

3.部分的な導入では、補償についての規則設定が必要になります。
一方で包括協定は政治的な目的があるときのみ活用されます。
ASEAN内での教育制度の違いがある為、資格の基準化は現時点では難しいのです。
APEC(アジア太平洋経済協力)建設プロジェクト包括協定は、最低限の特定の資格のみ求めますが、相互認証に頼っています。

最も良い方法は、部分的な相互認証を進め、その中で更に明確なガイドライン及び補償制度を設けることです。
規則設定の曖昧さや複雑さによりMRAはなかなか進展しません。これがASEANの経済発展を遅らせているのです。

ASEANの初めの目標は経済共同体を目指すことでした。

ASEAN内の経済改革を図り、新たにAEC(ASEAN経済共同体)として経済発展をさせていく為です。
この改革により期待されていたことは、ASEANの人口6億人以上もの規模の単一市場並びにヨーロッパ連合国、中国、日本及びアメリカ合衆国と並ぶ規模の単一生産拠点を作り出す事などが挙げられます。
この改革はジャカルタにあるASEAN事務局の発表に基づくものではなく、ASEAN地域の経済改革を行うにはまず経済を発展させる事も必要になってくるので、完璧な経済共同体を完成させる事は何十年とは言わずとも、何年もの時間を要します。
これまでにASEANの経済改革によって達成されてきた事には、AECの経済の全体的な開拓(これらの国々の経済発展には差があります。)、AFTA(ASEAN自由貿易地域)、AIA(ASEAN投資地域)、AFAS(ASEANサービス枠組み協定)、その他数々の協定がありますが、これらは必然的にAECの経済発展の差を埋めるという訳ではありません。
ミャンマーやラオスのような出遅れてしまった国々と、著しい経済発展を遂げているシンガポールやマレーシアとの経済格差は益々開いていっています。
さらに、ASEANの各地域で認められているブループリントやその他のプログラムなどをそれぞれの国の国家政策に組み込んでいく必要があり、それは簡単なことではなく、未だ完全ではありません。
例えば、AFTA(ASEAN自由貿易地域)により自由な貿易が可能になった事に関しては、関税削減がAECによって達成された事もあり成功と言えるでしょう。
しかし、ASEAN内での非関税障壁及び貿易摩擦はASEAN内にはこのような問題を解決する機関がない為WTO(世界貿易機関)に頼っています。
また、移民に関する事項のASEANによる宣言と、実際の施行状況ほど差が出ている項目は無いと言えます。
ASEANは2007年にセブ島にて移民労働者の権利宣言を採用しました。
しかし、ASEANの国々がこの宣言の施行方法(労働力を受け入れる側及び送り出す側)に同意しておらず、未だこの宣言に対し効力のある施行手段を見つけられていません。
熟練労働者の自由な移動に関するMRA(相互承認協定)においては、最もよくない状況だと言えます。
熟練労働者の自由な移動は、地域産業発展には欠かせない項目です。
このために、ASEANはサービスの行き来についての基本をMODE4(自然人の移動によるサービス提供)に基づき、様々な職業のMRAを導入しました。
MRAとは、様々な分野の職業で、教育、技術及び資格を平等に認めることです。
ベトナムとマレーシアの例を挙げると、ハノイで歯科医の資格を取得し、クアラルンプールで開業する事が可能ということになります。
初めにこのMRAが導入された職業は建築業、会計業務、看護、測量、医療及び旅行業が挙げられます。これらは2005〜2012年に認められました。
MRAによって地域及び国レベルで様々な組織や会社が設立されました。しかしMRAを様々な分野で導入し活用して行くにあたり、問題点も残されています。
ADB(アジア開発銀行)とMPI(移民政策研究所)によると、MRAにより定められている基準は他にもあり、言語、特定の機関による各資格の認定書、最低限の実績年数、国家試験の合格などが挙げられます。
これらを踏まえた上で、以前よりも熟練労働者の自由な行き来は増えているのでしょうか。
答えは、はい、ですがMRAに関しては、いいえ、です。
高等教育を受けている移民の行き来は、MRAに関係なく行われています。
シンガポールやマレーシアなどの国は移民労働者の行き来を促進しており、これには賃金の急上昇を抑え、必要な技術を手に入れられ、さらにはその技術の向上を可能にするなどの理由があります。
実際に、多くのフィリピンの技術者などはMRAに関係なく、ASEANのビザの制度(21日間以内の滞在ではビザは不要)を利用し旅行者として入国し、企業に直接応募をするなどの手段を取っています。
つまり、MRAの導入は、ASEAN各国で必要な技術が異なる事や規制が異なる事等から苦戦していると言えます。
多くの労働者を発信しているフィリピンでは、移民労働者については憲法で明確に定められています。
開業(営業)する事はフィリピン国民のみ許可される。(第7条第14節)これは労働法第40条でも強調されており、労働許可証はフィリピン国民のみに付与される。
移民に労働許可が与えられる場合は、フィリピン国内で優先順位の高い職業においての責任管理者またはフィリピン人では補いきれない職種において、与えられた仕事に意欲的に取り組める移民に限られています。
それにもかかわらず、ASEAN内での特に、シンガポールやマレーシアでは国内で必要な分野においての熟練労働者の移動は盛んに行われています。
しかし未熟練移民労働者に関しては未だ様々な問題が残されています。
労働者の自由な移動は、実際のところ行われておらず、必要な分野の熟練労働者のみの国間の比較的自由な移動のみにとどまっています。

電子商取引や他のデジタル経済に関係するものへの取り組みが最優先事項

シンガポールはASEANで来年議長の座を務めるにあたり、電子商取引(e-commerce)や他のデジタル経済に関係するものへの取り組みが最優先事項だとしています。

デジタル化されたASEAN会議にて、シンガポールはASEANの他の国々と共に電子商取引に対する障壁を減少させ、更に活性化させるため、規則の簡素化を図っていることを発表しました。
これにより、電子商取引により、東南アジアでの商品の取引は活発化し、ASEANに基盤を置いている会社の成長を促します。

<参考サイト>
東南アジアで人気のある通販サイト:Robins.VN

2025年のAECの新たな焦点はデジタル化経済の分野も含まれています。ASEANメンバー国内での電子商取引への関心も高まってきています。予想では、電子商取引によるもの(880億USドル)を含め、今後10年で2,000億USドルもの成長が期待できます。

ビジネス顧問機関シンガポール支部の議長であるロバート・ヤップは、著しい成長を見せているデジタル経済においてASEANはリーダーになり得る素質を持っている、と述べています。
(理由としてはGDP2・5兆USドルで更に6%の割合で成長しており、6億人以上の人口で35%の割合でスマートフォンが普及している事などが挙げられます。)
彼はASEANの会社に、デジタル化する経済に後れを取らぬよう、各会社でのデジタル技術の導入を呼びかけています。

会議ではデジタル化及びその他の技術の進歩による仕事の減少についての議題が注目されています。

東南アジア支部長のシュア・スーン・ジーは、この様に述べています。
政府が第四次産業革命において包括的な成長を成し遂げるためには、労働者の訓練を強化する必要がある。
人々が新たな職業を手に入れるためには、新たな技術と知識が必要になってきます。これは政府が産業発展により国民が古典的な職業を失う事を防ぐ為の長期的な解決策ではありません。

下半期に強力なIPOがASEANに流れ込んできている

マレーシアが最近の数々の進歩を掲げ主導しています。

東南アジアは下半期、以前よりもIPO(新規公開株)活動が増加していて経済的自信もまた増加している傾向にあると思いますと、銀行役員がビジネスタイムスで明かしました。
東南アジアの多くの国の株価指数は2017年現在とてもいい方向に動いていますと、ECM代表取締役 Ho Cheun Hon は言っています。
IPO(新規公開株)は好調で、東南アジア各国の市場では再売出しルートも確立してきています。
特にマレーシアが、IPO(新規公開株)においても昨年と比較し今年は好調です。
同様に、シンガポールUSB投資銀行の代表も株式市場の活動は活発化してきていると、話しています。
Ms.Chooは、「株式市場は昨年末より驚異的に回復してきており、これにより各会社の流動資産、資本の増加も実現します。
EYのデータによると今年の第2期は第1期と比べIPO(新規公開株)の再売出しは、質も良く更に活発です。
この地域でのIPO(新規公開株)は全体的に見て3ヵ月前の15の取引で11億ドルだったのに対し、33の取引で31憶ドルにまで上がりました。
第2期はインドネシアの証券取引所がASEAN(東南アジア諸国連合)内で最も活発で13の取引で2.21億ドルです。
一方最も前進したのはマレーシアで、13.4億ドルです。
シンガポールでは、第2期のSGX(シンガポール取引所)における5つのIPOで合計1.82億ドル上がりました。
ドイツ銀行(現在シンガポール内で数少ないREIT(不動産投資信託)のIPO(新規公開株)以外の取引をするHRnetGroupの管理をしている唯一の銀行)の東南アジアコーポレートファイナンス代表取締役Sreenivasan Lyerは
「タイとシンガポール以外でも特定のIPO(新規公開株)取引が下部組織及び専門サービス企業などで行われています。
一方マレーシアとインドネシアでは、産業と化学薬品において更なる活動が期待されています。
数年に渡る低インフレとデフレを経験し、今経済は順調に進んでおり企業も投資や新たな取り組みに対し自信を取り戻しつつあります。」と、述べています。
UBSのMs.Chooは更に「シンガポール市場の拠点となっているREIT(不動産投資信託)について、今年初めより取引が活発に行われており、不動産復帰、資産拡大などの活動が大いに期待されています。
SGX(シンガポール取引所)は更なる外国資産面においてのREIT(不動産投資信託)取引を視野に入れています。」と、述べています。
REIT(不動産投資信託)と事業信託の流通ルートは高生産性を求めている機関や、投資家のおかげもあり十分な流動性を確保できるとMr.Hoは言います。
過去4年間シンガポールで最も大きなIPO(新規公開株)がSingtel’s Netlink NBN Trustにより行われるでしょう。上場することにより総収益が23.5億シンガポールドルになると予想されます。
DBS銀行、モルガン・スタンレー及びUBSが協力し活動しています。 
タイでは、WHA社の子会社であるUtilities and Power社(国内最大の貨物の一時保管所の業者)がIPO(新規公開株)により収益を1.74億ドルに上げ、
インフラが加速する中、関連する固定資産を探している他種会社(年金基金、保険会社等)にも安心感を与えました。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)は、現在1.7兆ドルである世界的インフラ支出が2020年までに2倍になると予想しています。
Deloitteの収集したデータによると、2014年〜2016年にかけて、ASEAN(東南アジア諸国連合)内のIPO(新規公開株)の取引面では、エネルギーや資源などの消費者向けビジネス会社は工業産業同様、上位3つを占めています。
東南アジアが事業に参入し、GDP(国内総生産)の50〜60%を占めるようになりました。
「低賃金労働者の活躍で、インフラ影響や、様々な技術を利用することにより、東南アジアの経済成長はエネルギー、資源及び工業産業において著しい成長が見受けられます。

2016年までにタイはIPO(新規公開株)シェア(6.6億シンガポールドル)、資本市場(26.3憶シンガポールドル)どちらにおいてもASEAN(新規公開株)内でリードしていると言えます。
2014年〜2016年はベトナムがIPO(新規公開株)においてはトップを占めていました。
これは政府の働きによるもので、国のGDP(国内総生産)向上を図ったのですが成功とはなりませんでした」とDeloitteは言います。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の成長により、中流階級の市場参入の動きを受け、市場も第3次産業(金融サービス、生命科学等)への動きを見せています。
これらの国々は今後もインフラや規制政策などにより、これまでのような貿易、産業及び経済面での成長を続け更なる発展を遂げるでしょうと、Deloitteは述べています。