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ASEAN(東南アジア諸国連合)においての労働力の移動

2015年末のAEC(ASEAN経済共同体)の設立により、成長過程にある地域においての政治、経済及び異文化の統合の重要な画期的変化を達成しました。
ASEANブループリントが2007年に出来て以来、ASEANでは「ASEAN内での物品、サービス、投資及び熟練労働者の自由な移動、そして自由な資本の流れにおいての改革」を目指してきました。
地域内でこれらの項目における自由化及び統一化がかなりの成長を見せている中、熟練労働者の自由な移動においては遅れを取っています。
ASEANの目標では、自由な労働者の移動としていますが、現在の規約はすでに自由な労働者の行き来が行われているEU(欧州連合)の後を追っているだけでなくASEAN内での協定はNAFTA(北米自由貿易協定)、CARICOM(カリブ共同体)に比べ、やる気のない地域間協定が多いのです。
地域間協力が欠如する中、国家主義者、保護貿易主義及び政治的事柄も自由な労働力の動きを妨げている事に関係しています。
しかし、雇用主は特定の分野においての熟練労働者の採用を促す協定を有利に使う事も可能です。
主にMRA(相互承認協定)により熟練労働者の自由な動きは認められ、(MRAは各国で認められている能力、技術、経験及び認定書がASEAN内で有効になる)母国以外での労働を可能にします。

MRAは現在以下の職業において認められています。
・エンジニアリング
・看護
・建築
・薬学
・歯科医
・旅行業
・測量(枠組み)
・会計(枠組み)

MRAにより定められている基準はそれぞれの職業によって異なります。
例えば、エンジニアはまず母国の規制機関が発行している免許を取得する必要があり、更に卒業後最低7年間の労働経験が必要です。
これらを終え、ようやくACPECC(ASEAN公認プロエンジニア統合委員会)に応募できます。そしてもし採用されればASEAN公認のエンジニアとしてASEAN内の他の国で労働する事が可能になります。
一方、旅行業では個々の評価は全般廃止され、旅行に関する32の職業が自動的にMRA対象になりました。
MRAの他にも、MNP(自然人の移動) ASEAN協定、ACIA(ASEAN包括的投資協定)によりビジネスビザ取得の手続きは簡素化されました。
物品及びサービスの貿易、投資家、ビジネス訪問、契約サービス供給者、会社内訪問者などの国間の行き来や滞在も以前と比べ簡単に出来るようになりました。

MRAにより規制されている8つの職業においての自由な労働力の行き来は、以前よりは増えているものの、それ程活発ではありません。
例を挙げると、NAFTA(連合国というよりは地域的な貿易協定)では63の分野の職業において、カナダ、アメリカ合衆国及びメキシコ間の自由な行き来をするのに必要なものは雇用契約のみです。
MRAにより移民してきた労働者の割合はその地域の労働者のたった1.5%の割合で、ASEAN内の87%の労働者は何の技術も持っていません。(そのうちの多くの人は正式な協定に基づき移民してきた人ではありません)
MNPとACIAが国境をまたぐビジネスを促進している中、ビザについては地域ごとに規定が異なり、雇用主がASEAN各国から技術者を雇う機会を増やしていません。
MRAが適用される職業が少ない事、さらに実際にMRAの制度を使う事もまた難しいのです。
カンボジア、タイ、ミャンマー及びラオスでは、移民労働者の行き来が行われる際に会社は将来的には移民労働者が地元労働者に変わり活躍していくことを示さなければなりません。
インドネシアでは、移民労働者を雇う際、地元の労働者だけでは対応しきれないということを証明しなければなりません。
フィリピンでは更に、特定の職業において移民労働者を禁止しています。
しかし国際的な会社ではこれらの規制を避けることが可能です。(1つの国で労働者を雇い、彼らを海外支社へ移動させる。)
東南アジアの多くの国での労働規制は、労働力の自由な移動についての政治的及び地域的な意欲の欠如を表しています。
政治家、企業団体及び地域が移民労働者がより発展している国に流れ込んでしまい、競争が生まれる一方、発展途上国では高等教育を受けた貴重な国民が全て外国へ流れ出てしまう事を恐れている事が原因の一つです。
これらのことが懸念される中、フィリピン、インドネシア及びベトナム(これらの国はASEAN内の他国からの高等教育を受けた移民労働者を有利に活用できる)では、労働力と技術が不足しています。
同様に、タイ、マレーシア及びシンガポールでも労働力不足に困っています。(この点においてはインドネシアは若い世代の労働可能者が多く、自国で賄えている)

労働力の効果的な自由な移動を目標にするに当たり、様々な産業において規制が必要になります。また規制だけではなく、良識ある機関などが、そういったところに入り監理が行えると良いでしょう。

東南アジアに進出して10年を超える企業や海外現地工場で生産を行っている企業、海外現地にてサービス業を行っている企業などで構成されています。
組合案内 (リンク:日越振興協同組合

ASEANの航空業界を例に挙げると、資格、訓練、安全面、メンテナンス、航空交通規制及びオペレーションにおいての共通する規制はありません。
ASEAN内の工業において共通のガイドラインを作る事は地域産業の成長を促し、巨大な労働力を生み、地域協力を促すことにつながります。
ASEAN資格参照枠組みの設定によりいくつかの面においては国際的な認定を作り、規制の共通に働きかけ、更に大学などでも共通した基準を設ける事を促しています。
長い目で見ると、ASEAN内での労働力の移動は実現すると思われます。しかし、自由な労働力の移動においては、遠い道のりになりそうです。
この点はAEC(ASEAN経済共同体)において唯一明確な目標達成に向けての計画がありません。
自由な労働力の動きをASEANが目標にしてきていることを踏まえ現状を見てみると驚きが隠せません(国間の労働者の移動があまりにも少なすぎる為)。
実際、ASEAN内の企業がASEAN外からの労働者を雇うよりもASEAN内の労働者を雇う方が利点がある、という訳ではありません。
多くは、ASEAN内又はASEAN外の国から労働者を雇う場合、どちらもビザ及び雇用許可取得の手続きはどちらもさほど変わらないのです。
MRAが適用されている職種においても、雇用主はASEANにこだわらず、更に広い選択肢から労働者を選びます。
ASEANで事業を行う際、事業主はASEAN各国の発展の差と複雑な規制及び将来的な労働者不足の可能性も考慮する必要があります。

東南アジアで働く人にとって大事なもの

私のように東南アジアの国を行き来しながら働いていると、iPhoneというのは結構不便なものです。
なぜならiPhoneはSIMカードが1枚しか入らないからです。(海外で売られているスマートフォンは2つのSIMカードが入るデュアルスマホが主流です)しかし、最近、あることを知ったおかげでiPhoneを買おうと検討しています。
それは、インターナショナル ローミング シムです。
何かと言うと1枚のシムカードで世界中の国や地域で使うことが出来る大変便利なカードです。
カードによっては通話のみ、データ通信のみと分かれていたり、プリペイドやポストペイドと言ったようにも分かれてたりと、使う人の用途に合わせてそれぞれ対応されている非常に便利なものです。
通信費は500MB20$や30$といったように、正直安くはないのですが、1枚のシムカードで世界各国で使えるというのは、国と国を移動する人間からすると非常に便利です。ましてや日本出張時にも使えますから。
ちなみに日本での利用も出来ますから、出張期間が短い場合は大変重宝するかと思います。

ただ調べているとタイとベトナム、マレーシア、シンガポールとアセアン地域を網羅しているのかと思うと、肝心のカンボジアが抜けており、少し残念に思っている今日この頃です。

女性労働者に更なる権利を与えなければならない

10ヵ国により構成されているASEANはエネルギーに満ちあふれた経済組織です。
ASEANは現在世界第7位の経済力と世界第3位の労働力(これは将来的に更なる成長をする可能性を持っている)を誇っています。
ASEANの可能性を最大限に引き出すためには、様々な分野での労働力及び国間での自由な労働力の行き来が行われる必要があります。
現在、ASEANでは労働者の移民が活発に行われています。
ASEANに移民してくる人口は990万人にもなり、そのうち690万人がASEAN各国からの移民です。
ASEAN内での移民者の約半数は女性です。さらに統計結果によれば、この割合は増え続けています。
しかし、これはあくまでも記録されている移民労働者のみに基づいているもので、未申請の移民労働者は含まれていません。
さらにこの移民労働者たちは現状に満足しているのか、また、平等な権利は与えられているのか等は分かっていません。
ASEAN事務局、フリードリッヒ・エーベルト財団及びインドネシア労働省と協力し、UN Woman todayは「AEC(ASEAN経済共同体)においての女性移民労働者」という調査記事を出版しました。
この中では、「ASEANへ移民してきた人々に平等な機会が与えられていれば、移民者の利益やチャンスは更に大きかったのか」について書かれています。(この調査は、DFAT(オーストラリア外務貿易省)による資金提供により実現しました。)
この調査により分かったことは、ASEAN内の女性労働者はこれらのグループに集中している事です:低賃金労働者、技術を持たない労働者、軽視されている分野においての労働者等(これらの職業は不安定な環境で、労働者への権利があまり与えられておらず、社会保証などの制度も適応しない場合が多い) 。
この調査では、ASEANの女性労働者は様々な職業に平等に参入し、ASEAN経済統合による利益を平等に受ける権利があるのではないかについての議論がなされており、女性労働者でも安心して働ける場所を提供する人材紹介会社や支援する団体も増えています。

<参考サイト>
ASEANで女性でも安心して仕事が探せる求人サイト:キャリアリンクアジア

経済成長の最中である地域の非公式経済に参入することは、女性に対しての社会保障制度の強化、採用するまでの手続きの簡素化及び低コスト化、職業訓練の強化並びに法律扶助が必要です。
この調査では、適切な労働力の移動手段を制定することにより、より良い職業を手に入れる平等な権利が出来るのではないか、という結論にたどり着きました。
ASEAN内で、男女平等に対しての動きが勢いづいてきており、社会的に見て、法の下で女性が利益(教育面、健康面等)を得る事が可能になってきました。
しかし、女性がもっと効果的に経済に参加するには更なる努力が必要なのも確かです。
私たちの調査によれば、女性移民労働者は、移民先国と出身国のどちらの経済にも貢献していることが分かりました。
女性移民労働者は男性移民労働者に比べ給料の更に大部分を自国に残してきた家族に送り、彼女らの子供、出身地域及び出身国に貢献しています。
更に彼女らは、働いている国において賃金上昇を促し、すべての労働者の生活基準の向上を図っています。
女性の権利及び平等について働きかける事により、ASEANは全体的な成長を遂げる事が可能と言えるでしょう。
これが今すべきことであり、賢い事でもあります。
女性に平等な権利を与え、女性にどれだけの能力があるのかを認識するのです。
ASEANは彼らの目標である誰も取り残されることのない、人間優先及び人間中心のASEANに向け更なる活動をしていかなければなりません。
彼らがとるべき行動は以下が挙げられます。

経済援助、女性起業者への支援(女性起業者はすでに各国で活躍しています)、女性への教育の強化(化学、テクノロジー、エンジニア、数学等)
男尊女卑の古い考えを排除し、第4次経済発展において女性が男性と並びより良い職業を求め競争する事を可能にしなければなりません
(そのためには女性の採用を増やし、彼女らにふさわしい職業を与える事等が上げられます)。
まずは、(UN Woman)WEPs(女性のエンパワーメント原則)にサインし女性の参入に重点を置き、文化の変革を受け入れるのです(家庭内での男女の役割の見直し等)。
多くの男性は、子供、病人及び年配者に対して女性と同等の責任を負うことについて問題ないとしています
(しかしASEAN内での現状は、女性の方が圧倒的に家事及び育児をしており、この事により経済参入に後れを取っています)。
これらの提案は、国連事務総長により定められた女性の経済参入についてのハイレベルパネルに反響されたものです。
このパネルは従来の経済に対する常識を変える事により、男女平等に家事及び育児をし、女性が平等に経済参入する事を可能にします。
企業には、女性採用が目標数に達するとインセンティブを受け取れるという利点もあります。
私たち全員(規則発案者、会社及び個人)が女性に対しての平等な機会、権利そして平等な労働環境を手に入れられる社会(これによりASEANの更なる発展も促せる)を作る責任があります。
これは女性にだけ利点があるのではありません。女性に権利が与えられることにより、経済全体、社会及び国全体の利益につながります。
更にこれはASEAN内及び国際貿易を活性化させ、将来的には全てにおいての目標、人間中心を達成できるのです。

女性の移民労働者が増え、問題は深刻化

経済成長の発展とは異なり、法的保護の面においては未だ発展途上です。
シンガポールでは、家族を支えようと、職探しをしていたMyintは違法な手段を選ばざるを得ませんでした。
彼女の他にも数千の女性が彼女と同じ状況を生きてきました。
ヤンゴン職業紹介所は、軍政で2014年より禁止されてきた
「家庭内労働者が海外で職探しをする事を禁止する」という法律を破り、ミャンマーから多くの若い女性のリクルートが行われました。
2年の契約内容や、ヤンゴン職業紹介所の信頼性を調べる手立ても彼女には無いままシンガポールへ働きに旅立った彼女は、給料未払いのまま
3つの家の家事をさせられ、約8ヵ月後、ついに逃げ出しました。
「私はとても治安の悪い街、シャン州から来ました。」
HOME(移民の権利を守る機関であり、国際連合の機関と共同活動をしている国連ウィメン協会アジア支部)が運営するシェルターにやってきたMyintは言いました。
彼女のようにミャンマーから移民し過酷な労働条件の元働かされていた別の女性もまた、どのような状況で働かされていたのか説明しました。
彼女は1日の休日も与えられず、マンションの窓を危険な状態で掃除をさせられていた事などが挙げられました。
シンガポールは自国の法律に自信を持っていますが、この様な女性達(ビザを持っておらず、賃金未払いで働かされている)を保護する法律はなく、彼女らの問題を解決するには半年以上かかってしまうのです。
「半年待っても、不本意な結果に終わり、何の法的手段も取れませんでした。
10人のASEAN(東南アジア諸国連合)メンバーが2015年に定められたASEAN EC(東南アジア諸国連合経済共同体)による労働力の自由な移動の原則を認めていたのですが、これは未熟練労働者には適用されないものでした。
この他にも移民労働者になるためには多くの規則が存在します。

例えばシンガポールでは、移民労働者の祖国の法律は考慮されません。(労働時間に関する規則など、労働代理業者に1ヵ月に支払う上限額など、家事は労働基準法から切り離されていて労災補償も適用しません。)
それにも関わらず、移民労働者の女性が州の許可なくシンガポール人男性と結婚することは認められていません。
HOMEの運営者ジャクリン・タンはこう言っています。
未熟練移民労働者こそが、他の誰よりもASEAN(東南アジア諸国連合)を統一する事に欠かせない人達なのではないでしょうか。しかし現段階では彼らは現状に失望しています。
今年1月に、ASEAN(東南アジア諸国連合)による移民労働者の権利を主張、保護するという宣言(移民労働者の賃金、それなりの生活環境及び労働環境を守るという内容)から10年を迎えます。
さらに、国連条約である女性差別撤廃条約に署名している196ヵ国のうち、ASEAN(東南アジア諸国連合)はすべての国が署名しているのです。
1981年、女性移民労働者の権利保護に関する第26条、卑劣で不当な扱われ方を拒否する権利も批准されました。

「ASEAN(東南アジア諸国連合)は、19世紀のフランス人作家、オノレ・ド・バルザックの「法律とは蜘蛛の巣の様であり、大きな生物が生き延び、小さい生物は捕まります。」という考えを例示しています。
大多数の移民労働者として働いている女性は、約2000万人以上もの人々が仕事を求め後にした土地で、何の保護も受けられない違法なネットワークを使い働いています。
移民女性を守るとする条例は、女性は新地開拓するには非力過ぎる、という考えを生む逆効果の可能性があるのです。」と、国際労働機関の職員は述べています。

ミャンマーでは、2014年に行われた国勢調査によるとタイで働いているミャンマー人は140万人以上でしたが、実際には(無法地帯で働いている人を含むと)300万人以上です。
ASEAN8(ブルネイ及びラオス以外の東南アジア諸国連合)で唯一、他国からの労働者に頼っているとされるフィリピンが、2011年の家事労働条約(第189号)に敬意を示しています。
UN WOMEN(国連ウィメン)プノンペン支部のSocheath Hengによれば、約80万人のカンボジア人がタイの建設現場や農家として働いています。
しかし違法な手段で入国した人々は何の書類もなく、法的保護は存在していません。
さらに、カンボジアの法律には労働者の保護に関するものはありません。村人は多くの場合、騙され、改ざんされた書類を渡されています。
最も大きな問題は、労働者が他国から流れ込んでいても、受け入れている国にはほとんど影響しない事です。
植民地時代の影響もあり、英国の法律に大きな影響を受けているマレーシアは多くの移民労働者を受入れていますが、やはり未熟練労働者にとっては良い環境とは言えません。
最近のケースでいえば、病気の夫に代わり妻がマレーシアの工場へ行ったのですが、雇用主が診断書を受け付けなかった為彼女は賃金を受け取れずに、借金の為住む場所を失いました。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (2)

ASEANのリーダーたちによるAECの創造(現状はどうであれ)は素晴らしいものです。ASEANのリーダーたちによれば、AEC成功は(ASEAN各国の更なる成長を期待できることから)実現すると言っています。ASEANの政策に携わっている人々の間ではこの点においては満足されています。(貿易や国間のつながりにおいては機会を十分に生かし切れてはいませんが)
ASEANの多くの国では、2ヵ国間による自由貿易協定、ASEANの更なる投資及び規制への取り組みにより経済は発展すると考えられています。
これらは中々経済統合の実現に至らない事が要因かもしれません。しかしこの事によりASEANの経済統合には活気がないのかもしれません。
ASEAN外の貿易相手国は、ASEANを共同市場とみなしていないため、アメリカ等の国はTPP(環太平洋地域経済連携協定)を出して来たり、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に対する議論の余地を与えられないのです。
代わりに、政策担当者はASEANの設立当初の目的やASEAN内の関係安定を図る事をもう一度思い出す必要があります。
彼らは、AECは中国やインドなどの大国と対立した際、ASEANを統合させ、文化の違いなどを考慮した上での平和と相互理解を促す為のものだと認めなければなりません。
ASEAN各国がこの事を念頭に置いていれば現在AECは発展していたかもしれません。これを踏まえ、これから政策担当者はAECを実現させるために実際に行動しなければなりません。

<参考サイト紹介>
ASEAN域内の特恵関税を受けるための手続きおよび規則:JETRO

誰もAECが一晩にして達成するとは思っていません。
しかしASEAN会議において理念の供述、一般的なガイドラインだけで終わってしまっていると誰もAECが実現するとは思いません。
もしもAECが経済統合を促し、RCEPの先駆けになるのであれば、政策担当者は統合を進める必要があります。
政治家個人が説得力のあるもっともらしい事を言う事は可能です。しかし一度明確な目標が設定されるとグループとしてのASEANは有言実行しなければなりません。
ASEAN内のリーダーたちはASEANの経済統合(貿易及び投資)の進み具合を図る明確な測定方法を設定しなければなりません。貿易促進、無関税化及び非関税障壁の排除を促す確実な一歩を踏み出す必要があります。
これからASEAN各国がすべきことはASEAN内においての自由な投資を認める事です。
国内一位になっても、ASEANメンバー内で新たなライバルと競い合う事、中小企業は更なる事業拡大を目指す事、インフラもASEAN各国での後方支援により改善させていく事、等が挙げられます。
これらの達成は簡単なことではありませんが、ASEANがさらに上を目指し、そのために行動すれは経済統合につながるでしょう。
目標が逸れそうになったら、もう一度初心に返り、これは当初の目的達成に必要な事なのか、を考えるのです。広すぎる範囲での協定を設定するよりも、範囲を狭め明確な規定を設定するのです。
ASEAN会議を開くとなると様々な分野で様々な働きが行われます。(計画、資金、警備、及び交通機関。)リーダーたちも貴重な時間を割いて会議へと参加します。
これらを踏まえた上で、ASEANメンバー国ではこの会議によるASEANの更なる発展を期待して当然です。ASEAN各国が経済統合において真剣なのであれば、その根本を掘り下げていく必要があるのです。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は未だ発展途上であるのか? (1)

ASEANがASEAN内貿易について掘り下げていかなかった為、その機会はすでに失われてしまったのでしょうか
NUSビジネススクールのアンドリュー・デリオスによる議論
シンガポール:ASEANは多方面において成功を収めています。発足以来約50年間、当初のメンバー国の約倍の国が参加しています。
長期にわたり、国間での抗争もなく平和に繁栄してきています。
1993年からASEAN内貿易は4,000億ドルから2.5兆ドルと、6倍以上も上がりました。ASEAN各国では貧困が減少しました。ASEANの6億人の人々が低収入や貧困層でしたが、今やゆっくりと、しかし確実に貧困から低収入、低収入から中流階級へと変化してきています。
シンガポールは世界的に見ても裕福な国であり、ベトナムなどの国は急激な経済成長の最中にあります。
一方インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア等の国々は中流階級です。
ASEANのリーダーたちにより、ASEANの2020年の目標(平和で繁栄する地域)が設定されました。
この目標において重要な点は更なる経済成長の促進と、ASEAN内の貿易の活発化並びに国間の自由な人々、商品、サービス及び資本の移動です。
しかし現時点ではこれらの目標は達成されていません。

ASEAN内貿易はあまり活用されていません。ラオスを除くASEAN各国での貿易はASEAN内よりもASEAN外のほうが活発で、これには3つの要因があります。
比較対象としてNAFTA(北米自由貿易協定)を挙げます。NAFTA内貿易はNAFTA外貿易を発足から5年で上回らせることに成功しました。
ASEAN内で1番の開放経済のシンガポールでさえASEAN内貿易は全体の約4分の1です。ベトナムは国際経済の中に居ます。ASEAN内貿易は、ASEANで行われている貿易の僅か13%に留まっています。
ASEANの目的の一つにはASEAN内貿易の活発化が挙げられていますが、達成には程遠いいのです。
ASEANにとって、ASEAN内貿易よりもASEAN外貿易の方が魅力的です。これはASEAN内での経済の深い結びつきは確立されていない事になります。
経済の結びつきは経済発展への競争心を煽ります。
ASEAN内貿易が活発に行われていないという事は、ASEAN各国はASEANよりも経済大国であるアメリカや中国に頼っている事になります。
しかし関税の削減や非関税化導入により、ASEAN内貿易を活性化させる余地はあるのです。
世間一般で知られている様に、ASEAN内では様々なレベルでの経済発展の最中です。
低収入の国と高収入の国間での貿易は、お互いに有利な点があります。国と会社は常に対立関係にありますが、経済成長をするためには競争が必要なので、これはむしろ良い事なのです。
現在までASEAN内貿易を活発化させてこなかった為、その機会は失われてしまったのでしょうか。
中国の成長によりASEANの経済への挑戦は一時ストップされました。1990年代に中国の急激な世界的経済への参入が始まりました。急激に世界経済の中心に入り込み、貿易大国へと成長しました。
投資界ではASEANは一つの経済とみなされていたにもかかわらずASEAN内で実現出来なかった、広大な生産ネットワークを確立したのです。
中国の経済成長は賃金上昇につながり生産コストもあがりました。それにより、移民労働者が必要になってきたのです。
また、中国の生産ネットワークが東部のみではなく他の地域にも移動をしてきました。
しかし、これは更に中国内陸部、インド及びASEANにまで広がりを見せるのでしょうか。
開放的、競争的、そして包括的であるASEANにも新しい産業を引き付ける魅力はあるのでしょうか。
AEC(ASEAN経済共同体)達成のためには段階を踏む必要があります。
なかなか踏み出せずにいた第一歩を踏み出し、地域により異なる経済を単一市場へと変化させるのです。単一市場になる事で、能力及び機会を平等になります。ASEANが単一市場になることで他の経済大国と並び交渉する事も可能になります。
現段階においては、あまり大きな動きは見られません。話題は不確実で不透明な統合と協力について持ち切りです。報道によれば、セキュリティー面においての問題に集中しているようです。(北朝鮮問題、中国の東シナ海問題、国家独立政策など)
しかしこれらの事について話し合っていても、ASEAN経済の発展にはつながりません。
ASEANのリーダーたちは経済統合についての話し合いの場を幾度も設けられていますが、なかなか経済統合に向けての動きは見られません。
この事に進展があれば、投資家や会社のASEANへの関心も高まるでしょう。(今のところその兆しはあまりありません。)
ASEAN各国には何が出来るのでしょうか。
1つや2つの議題が成功へとつながっていれば動きも活発になるのではないでしょうかと、言っている人々もいます。

ASEAN内での労働力の自由な移動が必要

ASEAN(東南アジア諸国連合)が本領発揮をする為には、ASEAN内でのさらなる労働力の自由な移動が必要です。
世界の国々が競合的であり続ける為には、国際的な才能を手に入れる必要があります。これには、熟練労働者の国間の移動が必要です。
国の人口や国々の経済格差などもその国が必要としている分野においての労働力の移動を促進しています。
技術者の移動はMRA(相互承認協定)を施行する事によって計画的に実行していくことが可能です。
MRAにより認められる項目は教育を受けた上での専門的な資格のみで無く、才能、技術及び知識も含みます。
MRAは一般的な職業またはその国が必要としている専門的な職業どちらにも適応します。
しかしASEAN内でのMRAは未だ不完全なものであり、完全に自由な労働力の行き来は行われていません。
ASEANのメンバー国が協力的になり、労働者が行き来するのにより良い環境を作り出さない限りこの現状は変わりません。

ASEAN内の有能な技術者達はASEAN外の国々に移動してしまう傾向にあります。
それにもかかわらず、ASEAN内での労働者(熟練労働者を含む)の移動は活発に行われており、これはASEANの技術者の漏えいを止め、ASEAN発展を促進し、AEC(ASEAN経済共同体)の潜在的な能力を発揮させることを可能にします。

ASEAN内での労働者の自由な移動を活発にさせるための3つの方法

ADB(アジア開発銀行)と移民政策機関の共同調査によれば、ASEAN内での労働者の移動を促進させるには3つの異なる方法があることがわかりました。
1.MRAの制度を全ての職業に適応させる。
2.MRAの幅を狭め、限られた職業にのみ適応させる。
3.包括契約を通じて、将来のMRAの為さらに詳細に設定する。

1の方法はEU(欧州連合)が行っているもので、EU内の国民は例え就職先が決まっていなくても、好きな国に自由に移民できます。
このEUのとっている方法はASEAN内、またはアジア全体で見ても、決定的な人口動態の違い及び経済格差があるため、非現実的です。
ASEAN内のいくつかの国、例えばフィリピンでは若者の人口は増えていますが、シンガポールなどの国では高齢化が進んでいます。これは労働者の自由な移動を阻んでいます。
従って、ASEAN及びアジア全体で見ても、2のMRAの幅を狭め、限られた職業にのみ適応させる方法があっていると言えます。
しかし、2のMRAの幅を狭め限られた職業にのみ適応させる方法、または3の包括契約を通じて、将来のMRAの為さらに詳細に設定する方法を取れば、移民労働者受け入れ国は自国の教育制度やシステムに沿って一方的に新たな基準を補足することが出来ます。
例えばある国では、移民の看護師を採用する場合、自国民に求める経験年数とは異なる経験年数を求める事などが挙げられます。

AECが単一市場及び単一生産拠点になる(最も重点を置いている目的の一つ)為には、メンバー国が技術の流動性を促進しなければなりません。
現在、観光その他6つの分野において規制されています。(会計業務、建築業, 歯科医療, エンジニア, 薬事業及び看護医療)
しかし実行されてはいるものの、詳細な部分が透明性に欠けている為、不平等な部分もあり時間がかかっています。
MRAを掘り下げていくにはさらに幅広い職種及び技術を適応させる必要があります。
建築業及びエンジニアではASEAN内で認められる資格証明書を作り、会計業務の分野でも追って共通の資格証明書の発行についての話が進められています。
従ってこれらの職種に就いている移民者はASEAN内で、保持している資格が認められるのですが、だからと言って自由にASEAN各国を移動し、自由に働くことが出来るというわけでもありません。

重要な教訓
さらなる発展のためには、ASEAN各国にMRAを導入するにあたり3つの重要な教訓があります。

1.国々での異なる訓練の仕方を基準化することは難しいことです。しかし資格の相互認証はこれからも引き続き課題になって行きますが、これは教育制度を基準化したからといって簡単に達成できるものでもありません。ASEAN内で資格制度が異なるということを認識し、それに対応する補足的な基準を設ける等の対処が必要です。
自国又は移民先の国による指導教育を受け職場での経験を積む等が挙げられます。

2.ASEANは各国の需要により集中してMRAを導入するのか、分散してMRAを導入するのか戦略的に選択する必要があります。
集中型の場合さらなる方策が必要であり、分散型の場合は、管理することが困難になります。
例えばEUのように集中型を取るとなるとシステムを作ることにも維持することにも莫大な予算がかかります。
ニュージーランドとオーストラリアはお互いMRAがあり、それはEUよりも低予算で実現していますが、コンプライアンス面での課題が残されています。

3.部分的な導入では、補償についての規則設定が必要になります。
一方で包括協定は政治的な目的があるときのみ活用されます。
ASEAN内での教育制度の違いがある為、資格の基準化は現時点では難しいのです。
APEC(アジア太平洋経済協力)建設プロジェクト包括協定は、最低限の特定の資格のみ求めますが、相互認証に頼っています。

最も良い方法は、部分的な相互認証を進め、その中で更に明確なガイドライン及び補償制度を設けることです。
規則設定の曖昧さや複雑さによりMRAはなかなか進展しません。これがASEANの経済発展を遅らせているのです。

ASEANの初めの目標は経済共同体を目指すことでした。

ASEAN内の経済改革を図り、新たにAEC(ASEAN経済共同体)として経済発展をさせていく為です。
この改革により期待されていたことは、ASEANの人口6億人以上もの規模の単一市場並びにヨーロッパ連合国、中国、日本及びアメリカ合衆国と並ぶ規模の単一生産拠点を作り出す事などが挙げられます。
この改革はジャカルタにあるASEAN事務局の発表に基づくものではなく、ASEAN地域の経済改革を行うにはまず経済を発展させる事も必要になってくるので、完璧な経済共同体を完成させる事は何十年とは言わずとも、何年もの時間を要します。
これまでにASEANの経済改革によって達成されてきた事には、AECの経済の全体的な開拓(これらの国々の経済発展には差があります。)、AFTA(ASEAN自由貿易地域)、AIA(ASEAN投資地域)、AFAS(ASEANサービス枠組み協定)、その他数々の協定がありますが、これらは必然的にAECの経済発展の差を埋めるという訳ではありません。
ミャンマーやラオスのような出遅れてしまった国々と、著しい経済発展を遂げているシンガポールやマレーシアとの経済格差は益々開いていっています。
さらに、ASEANの各地域で認められているブループリントやその他のプログラムなどをそれぞれの国の国家政策に組み込んでいく必要があり、それは簡単なことではなく、未だ完全ではありません。
例えば、AFTA(ASEAN自由貿易地域)により自由な貿易が可能になった事に関しては、関税削減がAECによって達成された事もあり成功と言えるでしょう。
しかし、ASEAN内での非関税障壁及び貿易摩擦はASEAN内にはこのような問題を解決する機関がない為WTO(世界貿易機関)に頼っています。
また、移民に関する事項のASEANによる宣言と、実際の施行状況ほど差が出ている項目は無いと言えます。
ASEANは2007年にセブ島にて移民労働者の権利宣言を採用しました。
しかし、ASEANの国々がこの宣言の施行方法(労働力を受け入れる側及び送り出す側)に同意しておらず、未だこの宣言に対し効力のある施行手段を見つけられていません。
熟練労働者の自由な移動に関するMRA(相互承認協定)においては、最もよくない状況だと言えます。
熟練労働者の自由な移動は、地域産業発展には欠かせない項目です。
このために、ASEANはサービスの行き来についての基本をMODE4(自然人の移動によるサービス提供)に基づき、様々な職業のMRAを導入しました。
MRAとは、様々な分野の職業で、教育、技術及び資格を平等に認めることです。
ベトナムとマレーシアの例を挙げると、ハノイで歯科医の資格を取得し、クアラルンプールで開業する事が可能ということになります。
初めにこのMRAが導入された職業は建築業、会計業務、看護、測量、医療及び旅行業が挙げられます。これらは2005〜2012年に認められました。
MRAによって地域及び国レベルで様々な組織や会社が設立されました。しかしMRAを様々な分野で導入し活用して行くにあたり、問題点も残されています。
ADB(アジア開発銀行)とMPI(移民政策研究所)によると、MRAにより定められている基準は他にもあり、言語、特定の機関による各資格の認定書、最低限の実績年数、国家試験の合格などが挙げられます。
これらを踏まえた上で、以前よりも熟練労働者の自由な行き来は増えているのでしょうか。
答えは、はい、ですがMRAに関しては、いいえ、です。
高等教育を受けている移民の行き来は、MRAに関係なく行われています。
シンガポールやマレーシアなどの国は移民労働者の行き来を促進しており、これには賃金の急上昇を抑え、必要な技術を手に入れられ、さらにはその技術の向上を可能にするなどの理由があります。
実際に、多くのフィリピンの技術者などはMRAに関係なく、ASEANのビザの制度(21日間以内の滞在ではビザは不要)を利用し旅行者として入国し、企業に直接応募をするなどの手段を取っています。
つまり、MRAの導入は、ASEAN各国で必要な技術が異なる事や規制が異なる事等から苦戦していると言えます。
多くの労働者を発信しているフィリピンでは、移民労働者については憲法で明確に定められています。
開業(営業)する事はフィリピン国民のみ許可される。(第7条第14節)これは労働法第40条でも強調されており、労働許可証はフィリピン国民のみに付与される。
移民に労働許可が与えられる場合は、フィリピン国内で優先順位の高い職業においての責任管理者またはフィリピン人では補いきれない職種において、与えられた仕事に意欲的に取り組める移民に限られています。
それにもかかわらず、ASEAN内での特に、シンガポールやマレーシアでは国内で必要な分野においての熟練労働者の移動は盛んに行われています。
しかし未熟練移民労働者に関しては未だ様々な問題が残されています。
労働者の自由な移動は、実際のところ行われておらず、必要な分野の熟練労働者のみの国間の比較的自由な移動のみにとどまっています。

アジアでの不動産投資を視野

アジアでの不動産投資を視野に入れているのであれば、ASEAN(東南アジア諸国連合)が最も適している地域と言えるでしょう。
1967年のASEAN設立以来、ASEANは国際経済において活性化してきています。
ASEANのオフィシャルサイトで発表された「ASEANでの投資」によると、ASEAN10ヵ国のGDP(国内総生産)は2015年の調査で2.43兆ドルにまで達している事がわかりました。
年間の実質成長率も2007年から2015年にかけ5.2%上がり、2015年にはASEANの経済力はアジア第3位、世界第6位になりました。
しかし不動産投資において、はたして投資家たちはASEANを選ぶのでしょうか。
主要都市には豪華な物件が数多く存在するシンガポール、マレーシア、タイ及びインドネシア(ASEANの4大強国)に注目してみると良いでしょう。
このように、Knight Frank のニコラス・ホルトは言っています。
Knight Frankの調査によれば、クアラルンプールの過去5年間の居住用財産資本は2017年の第1期の時点でたった2.1%であり、一方はジャカルタ123.3%、バンコクが51.3%にまで成長し、シンガポールは1.3%下落しました。

ホルトは「クアラルンプールは他都市に比べ低価格で高品質な物件を提供しています。」と、述べています。
コンサルタント会社の調査によれば、物件価格は2016年末には1平方メートルあたり4,608.30ドルで、ジャカルタの4,366.81ドルよりも僅かに高く、バンコクの9,708.74ドルとシンガポールの23,255.81ドルよりもはるかに低くなっています。
Kight Frank Malaysia事務局長ジュディ・オングは以下のように述べています。
「言い換えれば、投資家は100万ドルある場合クアラルンプールでは217平方メートルの物件を購入できますが、
バンコクでは103平方メートル、シンガポールでは43平方メートルしか購入できないという事になります。
価格の面では、クアラルンプールはとても魅力的です。
物件に対する厳しい規制もありませんし、外国人は自由保有不動産を地域により異なる価格閾値を考慮し購入出来ます。
更に、クアラルンプールは他都市に比べ物価が低く、尚且つクランバレーMRT(大量高速旅客輸送)計画、LRT(軽量都市旅客輸送)網の拡大計画、クアラルンプール-シンガポールHSR(高速鉄道)計画等により交通網が急激に発達している。
2012年に導入されたCooling Measure(過熱抑制策)により2017年第1期の物件価格は1・9%後退したが、2017年第1期のGDPの好結果及び近々行われる総選挙も市場活性化に効果があるのではないかとKight Frank Malaysiaの取締役、Sarkunan Subramaniamは述べています。
7月に開始予定のMRT計画の成功、また新たなクアラルンプール-シンガポールHSR計画が成功すれば、これはマレーシアが東南アジア、もしくは全世界で最も住みやすい地域の一つになるというような大変革になるでしょう。
「クアラルンプールをさらに売り込むためには、政府の印紙税や不動産集益税等、他の物件取引にかかるコストを改訂する必要があります。
私の第2の故郷であるマレーシア発展の余地はあり、更なる人気を得るでしょう。」と、ジュディ・オングは言います。

シンガポール:安全な土地
一方シンガポールは安全な場所として知られており世界中の投資家の間では人気のある都市で、多くの富裕層が興味を持っていると、ホルトは言っています。
富裕層が海外の物件探しをする時の2番目に人気のある土地だという結果が2017年のKight Frank による調査でも分かっています。
KightFrank シンガポールの役員であるアリス・タンはこう述べています。
投資家や物件所有者の間では、シンガポールは安全地帯だと考えられており、短期・中期間用の投資用物件を探す際とても人気があります。
シンガポールのCCR(高級住宅街)で行われる取引が徐々に増えており、2017年第1期で行われた取引数は729件で全体の14%を占め、これは2016年第1期に島全体で行われた取引数(691件)を上回っています。
また、高級住宅の価格も前年同期比で4%上昇しています。
不動産物件購入の際の印紙税の保有期間が4年から3年に改訂されたことも、人気上昇の理由の一つです。
しかしCCRには未だ5,555もの物件が残っており、これらを改築し取引するには様々な税金がかかる他、確実な利益がでる保証もないため、これらの物件に関しては問題点が残されています。
これらの状況を踏まえ、今後これらの高級物件の価格帯は2017年の前年同期比では1〜2%下落するのではないでしょうか。

ジャカルタ:慎重ながらも楽観的
2016年ではジャカルタの高級住宅価格は前年度同期比で0・3%成長しました。
2017年も慎重ながら楽観的な見方をされています。
2017年に行われた地方選挙が成功を収めたことや、タックスアムネシティプログラム導入にもかかわらず、
投資家たちは政情不安や税金及び銀行の透明性への疑問から投資を躊躇しています。
結果投資家たちの中には、初めて家を購入する人達向けの郊外にある物件の取引をし、今後の不動産市場の動きを見極めています。この状況は2019年の大統領選まで続くのではないでしょうか。

バンコク:コンドミニアムに注目
バンコクの中心ビジネス街に位置する高級住宅は魅力的な数々のプロジェクトや製品基準や価格帯の改定の影響を受け、近年とてもいい状態が続いています。
2012年から2017年の5年間の高級住宅による不動産利益は51%です。
タイは長期投資を考える際、様々な利益を生むとてもいい物件なので、人気は年々上昇しています。
バンコクの主要物件の供給面においては限られています(リーズナブルな土地が限られている為)。
したがって、需要が増えていくにしたがって物件の売値も上がります。
注目すべき点は、バンコクのコンドミニアムの需要は上昇しているという事です。
コンドミニアムは近年バンコクの高級住宅の象徴になっており、交通機関、ライフスタイルの急激な変化がコンドミニアムブーム(特にダウンタウン地区)の要因です。
現在コンドミニアムは若者達からの人気のみならず、年配の人々からの絶大な人気を誇っています。

アジアの経済協力はどのように変わっていっているのでしょうか。

現在、アジアは経済において根本からの変革が行われている最中です。
中国では輸出主導型から消費主導型へと成長しました。
インドでは逆の事が起こっており、インド製商品の製造、輸出が経済成長へつながると考えられています。
2015年に設立されたAEC(東南アジア諸国連合経済共同体)は、更なる物品、サービス及び労働において東南アジア内での更なる動きを目標にしています。
日本はこの構造改革を各国の競争心を高める事になると受け入れています。
この動きはASEAN(東南アジア諸国連合)地域の経済協力及び統合を促進しています。
更にこれは6つのパラダイムシフトを推進します(それぞれ地域経済の予想に深く関係している)。

中国などが中(上)流階級の国になってきた事により、アジア諸国はアメリカ合衆国、EU(欧州連合)のような世界的輸入国になってきました。
アジア及び太平洋による地域間貿易は2010年〜2014年は55.8%だったのですが、2015年には57.1%に上がりました。
GMS(大メコン圏)においては同期間で2倍の8%(4000億ドル)にまで上がりました。
地域間の貿易はそれほど盛んではありませんでしたが、アジアの需要と供給のチェーンとなる事を予想せれ、最近ではそれが専門化されてきています。
AECは恐らくアジアを大きな単一市場にしようという計画の第一歩だと言えるでしょう。

地域間投資の成長は今後も期待できます。
地域内でのFDI(海外直接投資)は2015年には全体の52.6%のまで増加しました。GMS加盟国、カンボジア、ラオス及びミャンマーではFDIの大半は中国、タイ及びベトナムから来ています。
中国の会社は地域的な合併や買収を盛んに行っており、2015年には投資額は合計で500億ドルにまでなりました(アジア全体の約40%)。

地域的なサプライチェーン及びバリューチェーンは再形成されています。
中国及び日本のような高賃金国の会社の多くは、ASEANへの移動を考慮し始めています。
中国企業は更に中央アジア及び東南アジアへ進出し始めています。
この流れが続くと、地域的なサプライ及びバリューチェーンが確立されていき、アジアで独立した統合経済の確立につながります。
アジアの国々は協力し、包括的で環境に配慮し、経済的にも安定した地域を作っていく必要があります。

人々が国境を行き来する事もまたアジアの経済の独立につながります。
2010年のアジア内の移民者は全体の38%で、2015年には36.7%に下がってしまいましたが、人数的には3,060万人と良い数字を出しています。
アジアへの旅行者も増加しており、海外からのGMSへの旅行者は2015年には6,000万人にまで達し、2008年の2,600万人と比べるとかなりの成長が見受けられます。
これらの事から、アジア各国政府が国境間の移動をさらに促進させる努力をしなければならないとプレッシャーを感じています。

アジアの政府は、品物、サービス及び労働力の移動が更に簡素化するような地域及び国間での交通網を発達させなければなりません。
この事に関しては、交通機関の建設がGMS内では活発になってきています。
地域間の交通機関の連結は、徐々にではありますが進められてきています。更に発展させるためには、更なる政策や政府の協力が必要です。
更に、アジア地域での新たな輸送機関、ロジスティクス(輸送機関を独立させる地域の枠組み等を含む)の開設が必要です。
GMSにおいての貿易の円滑化に関する協定は確実な第一歩です。しかしこれではまだ足りません。

過去10年アジアは資本不足の解消に成功し、現在は豊富な資本を獲得しています。
アジア経済においての外貨両替も、1990年代の7000億ドルから、2014年には4兆ドルにまで上昇しました。
資本の流れはアジア内のみではなく、他地域からも増えています。
これは、資金面においての地域及び国の発達に大きく関わっています。
アジア諸国の発展において海外からの経済援助も不可欠ですが、彼らは経済をさらに発展させ、ライバルになっていかなければなりません(海外からの援助なしではやっていけない時代は終わったのです)。
経済改革によりアジア地域や国間においての協力及び統合が活発化し、これらは独立した経済の確立へつながります(これにより物品、サービス、労働力及び投資の国間の移動も活発化する)。
AECによるアジア単一市場及び生産拠点という目標は、近い将来実現する可能性を秘めています。
包括的で、環境に配慮し安定した経済を築いていくには政府が一丸となり協力する事が不可欠です。

ADBの大メコン圏においての責任者です。ADBに加わる前にはWTO(世界貿易機関)組織のベトナム外務省でありベトナムのWTOへの参加に貢献しました。同様にベトナムとアメリカ合衆国の二国間貿易協定にも携わっていました。
インドネシア、ジャカルタのASEAN事務局においてプログラム調整組織を率いていました。